今月のティー・ナンバー『傘』
投稿日時:2024年10月
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台風が来るのに
傘がなかった
いずこにか
ひとりで旅に出たようだ
私を探さないでくれとでも
残しておいてほしかった
雨が降りはじめていた
外に出るしかなかった
ビニール傘を買うために
濡れながら傘を見つけた
六十五センチしか置いていない
七十か七十五あればよかったのに
透明なビニールが
透明な雨粒をはじいて
小さな玉になる
やがて転がってひとつの条になって
黒ずんだ地面へと落ちていく
ビニールに当たる雨粒が
ぼとぼとと音を立てる
どうにも安っぽい音だ
ここだけは
少し気を利かせてほしかった