レンズ沼浚渫工事 vol.3「富士フイルム GF23mmF4 R LM WR」
投稿日時:2024年10月
←この月の目次
GFXなら是非とも使いたかった一本。
GFX50S IIを迎えたのは2年ほど前のこと。その少し前に、カメラ店でGFXシリーズをあれこれさわらせてもらい、解像力と豊かな階調の虜にさせられており、これは是非とも我が手中に収めなくては、と考えていたのです。そんなある日、ショーケースに中古のGFX50S IIが並んでいるのを見つけたので、悩むのもそこそこに購入しました。レンズキットだったのでとりあえずの撮影はできます。しかし、小生は標準ズームレンズをうまく使えないので、やはり頼もしい単焦点レンズは必須でした。
余談ながら、標準ズームレンズがうまく使えないというのは、次のようなエピソードに由来するものです。
小生が初めて使った交換レンズは、X-T3のキットレンズであるXF18-55mmF2.8-4 R LM OISでした。ところが、これをしばらく使ってみると、広角側ではもっと広く写したいし、望遠側も物足りないのをひしひしと感じるのです。それに小生の撮影スタイルを思い出してみると、ワイド端で可能な限り近寄り、これ以上近寄れないときにだけズームする…というような使い方をしていたので、ならば広角レンズと望遠レンズをそれぞれ持っておいた方がいいのでは?中途半端な標準ズームはいらなくね?という思考に至ったのでした。
そんなこんなで、小生は標準ズームレンズに苦手意識があるわけです。
閑話休題。小生がGFX50S IIのために選んだのはGF120mmF4 R LM OIS WR Macro、GF55mmF1.7 R WR、そしてGF23mmF4 R LM WRの三本。当時GF55mmF1.7 R WRはまだ開発中で市場に存在しなかったので、他の2本を購入して待つことにしました。先の2本も気長に待つつもりだったのに、注文して、1週間もしないうちに入荷。富士フイルムの担当者さんが「日本最速で出します!」と大見得を切ったとか何とか。さすが、沼の沈め方を心得ている。
GF120mmF4の解像力もGF55mmF1.7の明るさも、もちろん魅力ではあるけれど、ラージフォーマットを使うならやはり超広角レンズは外せない、そうでしょう?[1]
妥協のない光学性能。
購入当時はまだ開発中で入手不可能だった強力なライバル、GF20-35mmF4 R WR。GF23mmF4 R LM WRよりも広角で、さらにズームも可能ということで人気を博しているレンズです。口径、サイズ、重さ、値段はほぼ同じ、しかしGF23mmF4 R LM WRにも利点はあるのです。
それは歪曲収差が光学設計で補正されている点。Capture Oneのようなサードパーティー製現像ソフトを使うとわかりますが、RAWに歪曲収差補正をする必要がないのです。GF20-35mmF4 R WRでは焦点距離によって変わるものの、同じように現像ソフトに入れると歪曲があるのがわかります。撮って出しやX RAW STUDIOを使うと歪曲は自動でデジタル補正されるので、存在に気づくことはないけれども、光学設計で抑えてくれているというのはなんだか気分がいいものですね。
MTFを見るとGF20-35mmF4 R WRが有利なようです。しかし実際に撮影してみるとほとんど違いはわかりません。
さらにいうと、小生はスナップ撮影をすることが多いので、画角が固定されているGF23mmF4 R LM WRのほうがスタイルに合っていて、使いやすいです。
ちなみに、もし技術者さんと会うことがあったなら訊いてみたいことが一つあり、それは、最後の群は平らなガラスのようだがどのような効果があるのか? ということ。曲率が極めて緩やかなレンズになっているのでしょうか?それとも単なる保護なのでしょうか?ガラスを通るだけでも色のずれは発生するので、単なる保護ならば色収差が余計に出る恐れがあるわけですが、はてさて。
野外でも心強い頑丈さ。
GF23mmF4 R LM WRのWRは防塵防滴性能を意味します。さらに販促動画によると、タフネス性は非常にこだわって設計しました
とのこと[2]。使用者として頼もしい限りです。小生の個体は雨の降る中使ったり、さらにあちこちぶつけたりしているので、小さな擦り傷がいくつか付いています。
最大のダメージは日本水準原点を見に行ったときでしたが、レンズを交換しているとき、ベンチの座面から落としてマウントの根元に小さな凹みが。驚くことに問題なく動きましたが、さすがにこれは気になったので、あるときGF55mmF1.7 R WRと一緒に修理依頼しました。修理から帰ってきてカルテを見ると、検査の結果問題なし、細かい傷は性能に影響ないのでそのまま、とのことでした。これは信頼できる頑丈さ。これからも最前線で使っていくつもりです。
富士フイルム GF23mmF4 R LM WRの諸元[3]
名前・型番 | フジノンレンズ GF23mmF4 R LM WR | |
---|---|---|
メーカー | 富士フイルム | |
シリーズ・ブランド | フジノンGFレンズ/Gマウント単焦点レンズ | |
マウント | Gマウント | |
レンズ構成 | 12群15枚 非球面レンズ:2枚、スーパーEDレンズ:1枚、EDレンズ:3枚 |
|
焦点距離 | 23mm | |
イメージサークル | 43.8×32.9mmイメージセンサー | |
画角 | 99.9° | |
絞り値 | 最大 | F4 |
最小 | F32 | |
絞り羽根枚数 | 9枚(円形絞り) | |
フォーカス | インナーフォーカス リニアモーターによるオートフォーカス |
|
撮影距離 | 38cm~∞ | |
最大撮影倍率 | 0.09倍 | |
操作系 | 絞りリング(ロック機構付き)、フォーカスリング | |
耐候性 | 防塵防滴耐低温構造 9カ所にシーリング、-10℃の耐低温 |
|
サイズ | 最大径 | 89.8mm |
長さ | 103.0mm | |
フィルター径 | φ82mm | |
質量 | 845g | |
発売日 | 2017年6月22日 |