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レトロにフォーカス

レンズ沼浚渫工事 vol.2「SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary(Xマウント)」

投稿日時:2024年7月
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サードパーティ、一斉に参入

あれは2021年秋ごろからだったと思いますが、あまりサードパーティの存在感が無かった[1]富士フイルムのXマウントに、コシナ、TAMRON、SIGMAが相次いで参入してきました。コシナはMFの大口径単焦点レンズ、TAMRONは高倍率ズームレンズという、どちらも両社の得意とする設計でしたから、これでXマウントが賑やかになったなと感じさせられたものです。

コシナ、TAMRONに次いでやってきたのはSIGMAでした。SIGMAの打った一手は、すでにほかのマウントで出ていた単焦点レンズ3種のXマウントバージョン発売。SIGMAはマウント交換サービス[2]を実施しているので、これは安定の選択だったといえるでしょう。

発売前に予約購入。

発売の報に触れて悩んだのもほんの数時間、発売前に予約しました。はじめのきっかけは限定品のレンズケースに惹かれたから。このレンズケースは、SIGMAの16mmF1.4、30mmF1.4、56mmF1.4の3本でぴったりと収まるサイズになっており、間仕切りは動かせないというガラスの靴のごときケースなのです。小生は16mmF1.4の1本だけ購入したので、ほかの2本分のスペースに収まるものは何もありません。他のレンズでも入らないか試してみたりしたものの、やはり大きすぎたりスカスカになったりするため、このケースはお蔵入りしてしまいました。

発売日に店に行くと、16mmF1.4を予約した小生のほかに、30mmF1.4、56mmF1.4を購入した人が一人ずついるとのこと。もし3人が出会っていたなら、レンズがケースのあるべきスペースに収まるところを見られたかもしれません。しかし現実には、3人それぞれ2つ空きのあるケースを入手したのです。誰かの元のあるべきところと、こちらの収まるべきものに思いをはせると、郷愁にも似た気持ちに駆られたのでした。

ところが数ヶ月すると、中古の棚にSIGMAの56mmF1.4が並んでいました。さらに数ヶ月後には30mmF1.4も中古になっていました。どちらも誰かに引き取られたようですが、発売日の友はいなくなってしまい、残ったのは小生と16mmF1.4だけ。小生の手元で大事に使っていこうと、そう心に誓ったのです。

なんだかんだ使っちゃう。

さて…入手してから、たちまちいくつかの不満が噴出してきました。

▲絞りリングがない

富士フイルムの純正レンズには大抵ついている絞りリングを装備していないので、左手は添えるだけでほとんど役目はありません。ボディのダイヤルを指で回して絞りを操作できるものの、左手で絞りリングをつかんで回す方が素早く操作できますし、右手に操作のすべてを集約すると右手だけ疲れます。操作性についてかなり後れをとっていると言わざるを得ません。

▲でかい

SIGMAの16mmF1.4、30mmF1.4、56mmF1.4のトリオの中で頭一つ抜けて大きいです。ちなみにトリオで一番小さいのは意外にも56mmF1.4。富士フイルム純正のXF16mmF2.8は言うに及ばず、XF16mmF1.4と比べても鏡筒は長いです。純正で大きさの近いものはXF90mmF2でしょうか。SIGMAさんの名誉のために言っておくと、大きさの割に目方は軽く、振り回しやすいレンズではあります。

▲あまり寄れない

富士フイルム純正のXF16mmF2.8、XF16mmF1.4と比較したときに気になるのはこの点。広角なので、近くの物を大きく写そうとするとかなり寄らなければならないものの、あと一歩足りないシーンがたまにあります。

…とまあ不便な点はあるものの、しばらく使っているとそれらを妥協できました。
妥協は大抵の小さな問題を一掃できる、強力な手段です。小生の側にも、道具を理解する姿勢が足りないようでした。道具を変えられないなら、自分の使い方を変えるまで。

まず絞りについては、絞りを操作する代わりに、X-T3のシャッターダイヤルを使って間接的に変更すればよいのです。どうせ焦点距離16mmなので、寄らなければ大してボケません。それよりも、ぶれないシャッタースピードにして速写を優先することにしました。F1.4は暗いシーンで役に立つので、無駄ではありません。大きさについては、フードを外しました。フードは花形でかさばっていたので、収まりが良くなりました。寄りのシーンは、XF30mmF2.8 R LM WR Macroにお任せで解決。

使ってみると良い点ももちろん見えてくるもので、まず光学性能については文句なく、中心から端までなかなか良好な解像力を発揮します。ボケを入れても隅まで円形になるので使いやすく、また、構えたら大抵の被写体をすんなりと納められるちょうどいい画角も便利です。そして、廉価なので気軽に持ち出せるのもよく、ついでに純正レンズよりも他の人と被りにくいので、ちょっとだけ洒落たような気分になれなくもない[3]です。こうしてなんだかんだあって、普段持ち出すレンズの一つに落ち着きました。

SIGMA 16mm F1.4 DC DN | Contemporary(Xマウント)の諸元[4]

メーカー SIGMA
シリーズ・ブランド Contemporaryライン
別名 C017
マウント Xマウント[5]
レンズ構成 13群16枚
FLDガラス3枚、SLDガラス2枚、グラスモールド非球面レンズ2枚
焦点距離 16mm
イメージサークル APS-C
画角 83.2°[6]
絞り値 最大 F1.4
最小 F16
絞り羽根枚数 9枚(円形絞り)
フォーカス インナーフォーカス
ステッピングモーターによるオートフォーカス
撮影距離 25cm~∞
最大撮影倍率 1:9.9
操作系 フォーカスリング
耐候性 簡易防塵防滴構造[7]
(マウント部にゴムのシーリング付き)
サイズ 最大径 72.2mm
長さ 92.6mm
フィルター径 φ67mm
質量 405g
発売日 2022年4月8日